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住宅ローンの頭金はいくら必要?目安や平均は?
注文住宅を建てるときに、必ず出てくるワードが「頭金」です。何となく頭金の意味を理解していても、詳しくはわからないという方も多いのではないでしょうか。また、最近では「頭金ゼロで家を建てる」というような広告も目にしますよね。
- 本当に頭金ゼロで家が建つの?
- みんなってどのくらい頭金を入れているの?
今回はこのような疑問を持つ方に向けて、頭金について詳しく解説します。
頭金の役割とは?
本来「頭金」という言葉は、契約時に支払う「手付金」の意味で使われていました。しかし最近では、家づくりの費用に対して支払う現金のことを頭金と呼ぶケースもあります。
注文住宅を建てるときは、建築費用は住宅ローンで支払うと考えている方がほとんどでしょう。しかし、以前の住宅ローンの商品の中には「諸費用などは基本的に現金で支払う」という規約がある金融機関がほとんどでした。また、家づくりにかかる費用を全額借りられない仕組みでした。そのため、家を建てるためには必ず一部の自己資金が必要だったのです。
対して、最近はフルローンや諸費用含めたオーバーローンも可能な金融機関も出てきたため、頭金なしでも住宅ローンを借りることができます。
住宅会社側も、契約時に頭金を支払えない場合は相談に乗ってくれるケースも増えています。そのため、まとまった頭金を用意せず、住宅ローンを借入してマイホームを建てるという方も少なくありません。現在は金利が低いため、大きな額の住宅ローンを組んでも利息で大損しないという背景も、頭金を入れる人が減ってきた1つの要因と言えるでしょう。
しかし、まだまだ家づくりの際に頭金を入れる方も多いです。では、それぞれの頭金を入れる場合と入れない場合のメリット・デメリットとは何なのでしょうか。自分は頭金を入れるべきなのか考えてみましょう。
頭金を入れるメリット
頭金を入れるメリットを紹介します。
住宅ローンの借入額を抑えられるため返済の負担を軽減できる
頭金を入れることで、住宅ローンの借入額を抑えることができます。借入額を減らすことができれば、返済の負担を軽減することが可能です。
具体的な金額の差を見てみましょう。
【条件】
・建築費用の総額が3,500万円
・地方銀行の変動金利0.6%の住宅ローンを35年で借入
・頭金300万円を入れるか迷っている
頭金を入れない場合の借入額3,500万円と、頭金を入れる場合の借入額3,200万円で返済額を比較してみます。
借入額 | 月々の返済額 | 総返済額 | 総利息額 | |
①頭金入れない | 3,500万円 | 92,410円 | 約3,881万円 | 約381万円 |
②頭金を300万円入れる | 3,200万円 | 84,489円 | 約3,548万円 | 約348万円 |
借入額が300万円違うと、返済額は月々8,000円弱の差が付きます。月々8,000円の負担軽減ができるのは大きいですよね。
また、頭金をいれない場合は借入額が多くなるため支払う利息も増えます。頭金を300万入れる場合と入れない場合で、支払う利息は約33万円の差が出ます。
頭金を入れることで、返済額を軽減させることができ、利息の支払いも減らすことができます。
金融機関の選択肢が広くなる
頭金を入れることで、借入する金融機関の選択肢が広くなるでしょう。。理由は次の2つです。
- 借入希望額が抑えられるため審査の厳しい金融機関でも通る可能性がある
- 自己資金があることが事前審査のプラス材料になる
住宅ローンの条件は良いが審査が厳しいという金融機関もありますよね。そのような場合、頭金を入れる旨を伝えることで、審査が有利になるケースもあります。住宅ローンの借入額に悩んでいるなら、頭金を入れると申告して再審査してみても良いでしょう。
金融機関によっては金利や保証料の条件が優遇される可能性がある
金融機関によっては、頭金を入れることで金利や保証料の条件が優遇される可能性があります。金利が低くなったり保証料が安くなったりしたら、住宅ローンの負担を軽減することができますよね。優遇される条件は金融機関が教えてくれるケースもあれば、情報を公開していないケースもあります。住宅会社の担当者が情報を持っていることもありますので、確認してみると良いでしょう。
頭金を入れるデメリット
頭金を入れるデメリットを紹介します。
手持ちの現金がなくなる
当たり前のことですが、頭金を入れると貯蓄が減ります。預貯金の全額を住宅用の資金に充ててしまうと、急にお金が必要になったときに困ります。病気やケガで手術費用が必要になったり、体調を崩して働けない期間が続いたりしたときに大変です。
頭金を入れる場合は、その後の生活のことを考えてある程度預貯金を残しておくようにしましょう。家づくりのことだけでなく家族の暮らしのことを考えて、冷静に頭金の額を決めてくださいね。
住宅ローン控除の恩恵が減る
頭金を入れると住宅ローンの借入額が減るため、住宅ローン控除の恩恵が減る可能性があります。住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れる人に対して税金の控除を行う制度です。
住宅ローン控除の控除額は、年末の住宅ローン残高を加味して計算されます。そのため、ローン残高が少ないと控除額が減る可能性があるのです。
例えば、2022年末のローン残高が3,000万円のAさんと、2,700万円のBさんがいたとします。2022年の住宅ローン控除は「年末のローン残高×0.7%」の計算式で控除額が算出されます。Aさんは21万円の控除を受けられるのに対し、Bさんは18.9万円しか控除が受けられません。約2万円支払う税額が異なります。
もちろん住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高以外にも控除額を決める条件があります。例えば「年末残高×0.7%」で算出された控除額よりも、支払っている所得税・住民税(※住民税に関しては所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)までが対象)の額が低ければ、控除額がその税額以上になることはありません。
ただし、住宅ローン控除の額は借入額を基準に決定されることに間違いありません。借入額が増えることによって、増加する利息や保証料と控除額を比べて検討することが必要です。
結局頭金ってどれだけ必要なの?
頭金を入れても入れなくても、それぞれメリット・デメリットがあることが分かりました。では、結局頭金は必要なのでしょうか。
結論からお伝えすると、頭金がなくても住宅ローンの借入はできますし、注文住宅を建てることは可能です。ただし、頭金なしで家は建てられても、現金を1円も払わずに家を建てることはできません。なぜなら、一時的に現金で支払うものもあるからです。例えば、地鎮祭の費用や契約書に貼る印紙代等は基本的に現金で支払います。また、まとまった額の頭金は不要でも、数万円は契約時に支払ってほしいという住宅会社がほとんどです。土地も購入する場合は不動産屋に支払う手付金もあるため、現金をまったく使わずに家を建てることはほぼ不可能と言えます。
さらに、マイホームづくりは家を建てて終わりではありません。引き渡し後の引っ越し代や、家具家電購入などもありますよね。不動産取得税や固定資産税などの納税も必要です。
マイホームを購入するならそれらを支払うまとまった現金が必要です。また、入居後の万が一の生活費としていくらかは現金を貯蓄しておいた方がいいでしょう。平均すると、建築費用の1〜2割を頭金として用意する家庭が多いので、目安にしてみてくださいね。
頭金を貯めて買うのと、頭金0で買うのとどちらが得か?
では、頭金を貯めてからマイホームを購入する場合と、頭金ゼロですぐにマイホームを購入するのではどちらがお得なのでしょうか。
すぐにマイホームを購入するAさんと、3年後に300万円を貯めて購入するBさんを比較してみましょう。
【条件①】同条件で比較をする
- 建築費用はどちらも3,500万円
- 金利はどちらも0.6%
- Bさんは頭金300万円を支払う
Aさん【頭金なし】
(借入額3,500万円) |
Bさん【頭金300万円】
(借入額3,200万円) |
|
家賃 | なし | 7万円×36ヶ月=252万円 |
総返済額 | 約3,881万円 | 約3,548万円 |
計 | 約3,881万円 | 約3,836万円 |
単純に、家賃と総返済額の差だけで比較した結果です。300万円貯蓄したBさんの方が、Aさんよりも約45万円お得にマイホームを購入できることが分かりました。
【条件②】金利の上昇を考える
では、もう少し具体的なシミュレーションをしてみます。3年後に金利が0.1~0.2%上がっていたとしましょう。この場合はどちらがお得にマイホームを購入できるのでしょうか。
- 建築費用はどちらも3,500万円
- 金利はAさんが0.6%、Bさんは0.7~0.8%で計算
- Bさんは頭金300万円を支払う
Aさん【頭金なし】
(借入額3,500万円) |
Bさん【頭金300万円】
(借入額3,200万円) |
|
家賃 | なし | 7万円×36ヶ月=252万円 |
総返済額 | 約3,881万円(金利0.6%) | 約3,609万円(金利0.7%)
約3,667万円(金利0.8%) |
計 | 約3,881万円 | 約3,861万円(金利0.7%)
約3,919万円(金利0.8%) |
金利が0.1%上がっていたときは、頭金を貯めたBさんの方が約20万円得をすることが分かります。しかし、金利が0.2%上がるとAさんの方が約38万円得をするという結果になりました。金利上昇のリスクを考えると、なるべく早めにマイホームを購入した方が良さそうです。
【条件③】建築費用の上昇を考える
続いては、金利は上昇しなかったが、建築費用が上がったケースをシミュレーションをしてみます。実際に、ウッドショックなどの影響で、数年前と比べて建築費用が数十〜数百万円上がった住宅会社も多いです。今回は、3年後に50〜150万円建築費用が上がったケースを見てみましょう。
- 建築費用はAさんが3,500万円、Bさんは3,550~3,650万円
- 金利はどちらも0.6%
- Bさんは頭金300万円を支払う
Aさん【頭金なし】
(借入額3,500万円) |
Bさん【頭金300万円】
(借入額3,250~3,350万円) |
|
家賃 | なし | 7万円×36ヶ月=252万円 |
総返済額 | 約3,881万円(金利0.6%) | 約3,604万円(3,250万円借入)
約3,715万円(3,350万円借入) |
計 | 約3,881万円 | 約3,856万円(3,250万円借入)
約3,967万円(3,350万円借入) |
50万円の費用追加の場合はBさんの方がお得ですが、150万円の費用追加の場合はAさんの方が86万円もお得になることが分かりました。同じ仕様の住宅を建てても、数十万円の金額差が出てしまう結果でした。
シミュレーションを踏まえた考察
今後、住宅価格の高騰は考えられますが、安くなるというのは考えにくい状況です。金利上昇のリスクと合わせて考えると、なるべく早く建てた方がお得になる確率は高いかもしれません。
さらに、頭金を貯めてからマイホームを購入すると、住宅ローンの開始年齢も遅れてしまいます。住宅ローンの開始が遅くなると、年齢によっては退職後も返済が残るリスクもあります。さらに、住宅ローンを借りるためには保険加入が必須なので、健康面を考えても健康なうちにマイホームを購入する方が良さそうです。
一方で、頭金なしの場合はローンの借入額が多くなるため、金利上昇時に大きなリスクを伴います。生活できるギリギリの金額の住宅ローンを組んでしまうと、金利が上がったときに返済不可能になるかもしれません。また、借入額が多くなると、マイホームを売却する際に残債が残るリスクがあります。売却時に現金でローンの完済をしなければならない可能性もあるため、注意が必要です。
条件①のような単純な比較の場合、頭金を貯めた方がお得になるケースも少なくありません。ただし、現在は住宅ローン控除など税制の優遇がありますが、将来については未定の為、その点では単純比較にはならないことは頭に入れておくと良いでしょう。条件②・③のような金利上昇や建築費用増加の予測はできません。現状の金利はかなり低い点、ウッドショックなどの上昇を考えると、早くマイホームを購入した方が得になる確率は高いといえます。完済時年齢や健康面などを考えても、メリットが大きいでしょう。
ただし、頭金なしの場合は購入時の予算組みと将来設計が非常に大切です。無理なく返済できる借入額を考えながら、家づくりを進めてくださいね。
まとめ
頭金なしでも注文住宅を建てることはできます。低金利や住宅ローン控除などを考慮して、あえて頭金なしを選択する方もいます。ただし、家づくりでは現金が必要になる場面もありますので、ある程度の貯蓄は必要です。自分にとってのメリットを考えながら、頭金あり・なしを検討してみましょう。
また、住宅ローンの頭金を決めるには、長期的な視点も重要です。おうちモールでは、国家資格を持ったファイナンシャルプランナーが、お客様に合わせて詳細なファイナンスプランニングを作成して、適正な住宅購入予算のアドバイスを行っています。ファイナンシャルプランニングを行うことで、今後の預貯金の推移を確認することができますので、預貯金から頭金をどの程度捻出しても良いかを的確に判断できるようになります。
また、住宅ローン控除の活用も踏まえたアドバイスも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください!
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